昭和時代に映画館で見て今も心に何かが残っている傑作洋画
映画は電車に乗って、歩いて、わくわくしながら映画館で見るものです。だから、何十年も経ってもその映画のストーリーだけではなく、その頃が浮かんでくるのです。あらためて手元にあるパンフレットを見ても同じです。中にはどんな映画だったか全く思い出せないものも多々ありました。やはり覚えているのはアメリカンニューシネマが多いこと。10代で見たニューシネマは今の自分の何十パーセントかを占めていると思っています。あの『ショーシャンクの空に』もこの時代に作られたとしたら、全く違った結末になっていたかも知れません。ハッピーエンドはほとんどないのがニューシネマの特徴の一つですから。当時は名画座があちこちにありました。主に通ったのが池袋の文芸座、渋谷の全線座、飯田橋の佳作座です。特に全線座は学校帰りに毎週のように通いました。三本立てで150円でした。非常に個人的趣味ですが、パンフレットを見て何かが残っていた映画とその音楽などを載せてみました。
  • SF文庫に夢中だった頃の2冊の映画化作品 《ミクロの決死圏/ソラリスの陽のもとに》Open or Close
    ミクロの決死圏(1966)

    アシモフの傑作です。映画の方は1971年のリバイバル版だと思います。想像もできないような人体の内部の探検という、わくわくする期待を裏切らない、当時としては素晴らしい映像でした。
    惑星ソラリス(1972)

    この作品は本でのイメージとは残念ながら違っていました。主役である、意志を持つソラリスの海をどう描くのか楽しみにしていただけに少しがっかり。最後が本と違い、見ている側にはショッキングに。そのためかストーリーが本よりも難解に。
  • アメリカンニューシネマのはじまり 《俺たちに明日はない/明日に向って撃て(実話の映画化2本)》Open or Close
    俺たちに明日はない(1968)

    ニューシネマといえばこの映画。非常なラスト。フォギーマウンテン・ブレイクダウン。FBIが待ち伏せって。フェイ・ダナウェイの最後は壮絶です。心に重い何かがオリモノのように残っています。

    Foggy Mountain Breakdown
    明日に向って撃て(1970)

    こちらも実話の映画化。イージーライダーと同じ年にロードショー。エッタ・プレイスは実際もキャサリン・ロスに負けない知的な美人。ラストの「ファイアー」の叫びが終演後も響いていました。

    雨にぬれても/B.J.トーマス
  • キャンディス・バーゲンの問題作2本 《魚が出てきた日/ソルジャー・ブルー》Open or Close
    魚が出てきた日(1967)
    これもラストシーンで問題提起。キャンディス・バーゲンはこの映画が初見です。エーゲ海の美しい景色の中での観光客の楽しい描写に隠れるように動く米軍。放射能の恐怖。あまりに異なる対比に呆然。
    ソルジャー・ブルー(1971)
    それまでの西部劇はなんだったのか。ことごとく覆りました。アメリカ開拓史の裏側が見えます。これが人間の本当の姿なんだろうかと。映画館を出てからも、重いおりのような物が心に。
  • 純粋で真っ直ぐだったあの頃の学生運動映画 《いちご白書/…YOU…》Open or Close
    いちご白書(1970)
    この2本とも学生運動にのめり込む女子学生とそれほどでもない男子学生のラヴ・ストーリーが絡んだ映画。こちらは実話に基づいています。当時は日本でも多くの学生が学校側に変革を求めて揉めていました。バリケードとロックアウト。そして学校側の警察介入。この映画のままです。挿入曲もイージーライダーに並ぶ秀曲揃い。

    The Circle Game/バフィー・セント・メリー
    …YOU…(1970)
    ユーは同級生ではなくエリオット・グールドが教職を目指す先輩。相手はキャンディス・バーゲン。自分の学校は運動はありましたが、なんせほぼ男子校なのでこの二つの映画のようなシチュエーションはあり得ませんでした。同時代を過ごした人たちには2本とも見てあの頃の熱を思い出してほしいです。

    Getting Straight/P.K.リミテッド
  • これぞ男の友情…たばこ1本で始まる出会いと別れ 《さらば友よ/スケアクロウ》Open or Close
    さらば友よ(1968)
    フランス映画。チャールズ・ブロンソンとアラン・ドロンが繰り広げるアクションムービー。とにかく個性的でカッコいい二人の奇妙な友情。グラスにコインを落とすシーン、最後のたばこのシーンはこのパンフレットの表紙にも載っていますが秀逸です。
    スケアクロウ(1973)
    こちらはジーン・ハックマンとアル・パチーノ。ユタの砂漠の一本道。たばこの火を借りるシーンから二人の友情が静かに始まります。ジーン・ハックマンのストリップのシーン、アル・パチーノの電話ボックスのシーンは心にジーンときます。
  • 死で幕を閉じる警察官と死から覚醒する警察官 《グライド・イン・ブルー/マッドマックス》Open or Close
    グライド・イン・ブルー(1974)
    グライドとはハーレーのエレクトラグライド。この映画にはBSTと双璧だったシカゴのメンバーも出演していました。不条理な死で終わるラストシーンはイージーライダーとかぶります。最後に曲が流れるのも同じ。テリー・キャスのボーカルが心に沁みます。

    Tell Me/シカゴ
    マッドマックス(1979)
    オーストラリアの映画。時代は近未来。まじめな警官だったマックスが奥さんと子供を惨殺され、その怒りからマッドマックスに変貌し復讐に。オーストラリアの大地を部隊にしたすごいカーアクション映画でした。その後シリーズ化されてますますスケールが大きくなり、アウトローとなったマックスが闘い続けていきます。映画ならではのスケールが、ある意味気持ちいい。
  • やがて訪れる相棒の死 《真夜中のカーボーイ/ボルサリーノ》Open or Close
    真夜中のカーボーイ(1969)
    田舎から来たジョーをめいっぱい悪ぶるリコ。薄汚いニューヨークの巣。リコのけが。そして二人の再出発に選んだマイアミ。グレイハウンドの中でのおもらしのシーンはこっちも泣き笑い。ダスティン・ホフマンの名演です。クリーンで明るいマイアミの光と対比するリコの死。素晴らしい映画です。

    うわさの男/ニルソン
    ボルサリーノ(1970)
    フランスの映画。30年代のギャングの時代。一人の女をめぐってのケンカから友情へ。二人で大物たちを翻弄していきます。まわりは敵だらけ。そして思った通りの復讐にあいます。ダイナマイトを顔に巻かれたベルモンドのシーンは強烈。やはり殺されるのはベルモンドなんですね。そして続編はアラン・ドロンの復讐劇。

    Borsalino Theme
  • 気持ちよ~く騙された映画 《スルース(探偵)/スティング》Open or Close
    スルース(探偵)(1973)
    たまたま通りかかって、何気なしに見た映画。こんなに面白いとは予想外で強烈に印象に残りました。庭に造られた迷路。これもそれからつづられる物語の暗示だったのでしょうか。この映画の若い役のマイケル・ケインが年寄りの役として何年か前にリメイクされました。若い方はジュード・ロウ。ただ全く違う映画になってしまってがっかりでした。見るならこっちの方にかぎります。とにかくずーと続く緊張感の中で淡々と進む物語。どんでん返しの繰り返し。見て絶対損はないです。
    スティング(1974)
    こっちはあの明日に向って撃ての名コンビが詐欺師となってギャングとお客を騙し続けます。ポール・ニューマンのカードさばきはプロ級。物語が何章かに分かれていて章がわりの度にタイトルが出ます(映画『ペーパー・ムーン』方式)。ラグタイムをこの映画から知り、聴きまくりました。映画が終わったときに、どこからか「まいった!」っていう声があがったのを覚えています。

    THE ENTERTAINER
  • 起こり得る未来の恐怖2作 《アンドロメダ/ソイレント・グリーン》Open or Close
    アンドロメダ(1971)
    この映画の監督があのロバート・ワイズだとずいぶん経ってから知りました。「サウンド・オブ・ミュージック」の監督が……不思議です。それにしても宇宙からの道のウイルスを核で退治しようとするとは。最後に地球を救うのが赤ん坊と老人だという皮肉。
    ソイレント・グリーン(1973)
    ウイルスと違い、未来の食料難の話です。年々平均寿命が長くなっていく世界にとって、あり得ない話ではないと感じ、その時のいやな怖さが残っています。ただ、今は自分が老人になった時、ソイレントに身体を提供することにあまり抵抗がないかも。
  • サイレント映画からのライバル 《セブンチャンス/ライムライト》Open or Close
    セブンチャンス(1926)
    チャップリンは結構見ていたんですが、キートンを映画館で生まれて初めて見たのは16歳くらいで、笑いすぎてしばらく腹筋痛。あんなに映画館で笑ったのはこの時が最初で最後。コメディアンにキートンのファンが多いのが今なら分かる気がします。全く感情を出さない表情。そのまま全速力で何百人の警官や花嫁や大量の岩の落下から逃げるドタバタアクション。理屈などいりません。この映画、なんと昭和元年公開です。もちろんサイレント映画ですからしゃべりません。抱腹絶倒という言葉はバスター・キートンのためにあり。




    ライムライト(1953)
    チャップリンの映画には笑いの中に涙、素晴らしい音楽がプラスされます。これこそ喜劇の正統派。晩年のこの作品にも流れる名曲「テリーのテーマ(エタナリー)」。モダン・タイムスの所でも書いたようにトーキーに乗りおくれ、くすぶっていたキートンをこの映画に誘い、二人で素晴らしいアドリブを見せてくれます。二人の作品は見て損は絶対ありません。曲はテリーのテーマに加えてモダン・タイムスの名曲スマイルも追加。いずれも永遠の名曲。

    Terry's theme
    Smile
  • キューブリックの問題作 《2001年宇宙の旅/時計じかけのオレンジ》Open or Close
    2001年宇宙の旅(1968)
    美しい映像です。『ツァラトゥストラはかく語りき』―あまりにも有名になって、この曲が流れるとこの映画の映像が必ずといっていいほど浮かんできます。人類の創世からの罪とは。今思えば、ハル9000の方が人間的だったような。

    Also sprach Zarathustra
    時計じかけのオレンジ(1972)
    最初からはじまる狂気、暴力、そしてレイプ。作家の家の場面のまぶしい白が強烈に印象に残っています。なんで『雨に歌えば』なんだ、こんなときに。暴力に嫌悪感を覚え、主人公アレックスがつかまって警官にもボコボコにされる時はスカッとしている自分がいました。その後の手術。まさかあんなに変わってしまうとは。ただ、心の奥では、最後は元のアレックスに戻るはずと思ってましたよ。
  • 破滅(自殺)する権利 《バニシングポイント/ジョニーは戦場へ行った》Open or Close
    バニシングポイント(1971)
    ただ車を届けるために走り続けるという本当に単純な映画です。不思議な感情が残ります。主人公コワルスキーの心にシンクロしていたのでしょうか。パトカーから逃げるだけで不本意にも勝手に英雄とされて。まさかのブルトーザー。そしてアクセル全開。これはコワルスキー自身の本当の意志なのでしょうか。

    ミシシッピー・クイーン/マウンテン
    ジョニーは戦場へ行った(1973)
    第一次世界大戦の一人の兵士の悲劇です。この映画の主人公ジョニーの方は絶対に自分の意志なのに自分では物理的に無理。暗い倉庫の中で声にできないSOS。目も耳も声も手足も失い、名前さえも失った者に残されたものは。残酷な話です。自分がもしそうだったら、と考えたところで想像もできませんでした。
  • ミュージカル映画・二つの初めて 《サウンド・オブ・ミュージック/ラ・マンチャの男》Open or Close
    サウンド・オブ・ミュージック(1966)
    生まれて初めて映画館で見た洋画です。小学生でした。「ドレミの歌」はペギー葉山さんが、「ひとりぼっちの羊飼い」はみんなの歌かなんかでやっていたので知ってました。この時以後歳を重ねていく中で何回か見直しています。その度に目線が子供たちからマリアへ、今やマリアから修道院長のような年齢になってしまいました。

    The Sound of Music
    Climb Every Moutain


    同じくジュリー・アンドリュースの『メアリー・ポピンズ』から「お砂糖ひとさじで」を

    A Spoonful of Sugar
    ラ・マンチャの男(1972)
    初めて映画館で不覚にも涙をこぼしてしまった映画です。有楽座、どの辺に座ったか今も覚えています。エンドロールの時、ちょっと恥ずかしくてなかなか立てず、周りをうかがったらなんのことはない、周りの人たちもみんな泣いていました。ソフィア・ローレン素晴らしい。イメージとしてルノワールの絵から出てきたような肉感的、そして典型的イタリア人ですね。ピーター・オトゥールとジェームス・ココのドン・キホーテとサンチョ・パンザの姿は、昔本で読んだときに載っていた挿絵とそっくりでした。

    The Impossible Dream


    ラ・マンチャは日本では松本幸四郎(当時はまだ市川染五郎の名でした)さんが演じていました。それと同じような人気のあったミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』は森繁さんでした。

    Sunrise Sunset
  • 暴力という方向に向かってしまう理由とは 《わらの犬/タクシードライバー》Open or Close
    わらの犬(1972)
    暴力を否定しアメリカが嫌になり、イギリスの田舎に引っ越したアキバ系数学者。ダスティン・ホフマンぴったりです。でも結局人間がそこにいる限り結局争いは起こってしまうんです。暴漢が家に入ってきたら、言葉で諭すなんてきれいごとなんです。これって自衛権? アキバ系が切れたときは恐ろしいんです。


    タクシードライバー(1976)
    アメリカンニューシネマはこの作品で最後と言われています。ベトナム帰りという人間は何かしら精神を冒されているとよく言われていました。デニーロの演技すごいです。あと13歳で娼婦を演じていたジョディ・フォスターも名演です。こちらの暴力は能動的です。英雄になっても最後のデニーロの眼の中には狂気が見えます。

    Taxi Driver
  • 曲が流れるだけで胸がつまるラストシーン 《ひまわり/カッコーの巣の上で》Open or Close
    ひまわり(1970)
    戦争で引き裂かれた二人の人生。マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン。ひまわりという花はあんなに明るくいつも太陽を向いているのに。この映画のひまわり畑のシーンは悲しい。同じ花なのに。駅のシーンのソフィア・ローレンの表情が忘れられません。

    I Girasoli Theme
    カッコーの巣の上で(1976)
    逆光の中、走り去っていくチーフ。印象的なラストシーン。本物の精神病患者もエキストラ。映画を見ていると誰が俳優なのか分かりません。ジャック・ニコルソンの映画で一番好きな映画。バスケットボールのシーンでは何故か自然と涙。そして枕のシーンでもまた涙。

    One Flew Over the Cuckoos Nest ending Theme
  • 戦争の狂気を皮肉とジョークで 《M★A★S★H/キャッチ22》Open or Close
    M★A★S★H(1970)

    この映画の時代は朝鮮戦争の頃です。パンフレットの裏表紙のイラストが秀逸なので載せました。悲壮感とか緊張感とかは一切なく、エルオット・グールドとドナルド・サザーランドが繰り広げるギャグ。これも一種の戦争映画なんでしょうね。




    Suicide is Painless
    キャッチ22(1971)
    こちらは太平洋戦争のヨーロッパ。笑えます。誰がまともで誰が狂ってるか、全員なのか、見ている人間もなのか。キャッチ22とはアメリカ空軍軍規第22項のことで『精神に破綻をきたした者は、自ら診断を願い出、狂気と診断されれば除隊できる。ただし、自ら己の狂気を認識できる者は、“狂人”とは呼ばれない』というめちゃくちゃ矛盾した法規です。航空機好きの僕にとって印象に残っているのはB25ミッチェル《東京初空襲をした爆撃機です》部隊のテイクオフ場面と最後の小さなゴムボートでの自由への脱出場面でした。

    映画仕様の塗装図へ
  • 二通りの未知との遭遇 《未知との遭遇/エイリアン》Open or Close
    未知との遭遇(1978)
    前年にスターウォーズを作ったスピルバーグがどんな宇宙人を描くのか楽しみに出かけました。UFOが美しく素晴らしかった。こんなにやさしさが感じられる宇宙人はそれまでの映画にはありません。それと五つの音。この音が何年経っても耳に残っています。こんな遭遇だったら遇ってみたいって見た人はみんな思ったでしょう。その後に映画『ET』でまた会えますけど。

    Close Encounters
    エイリアン(1979)
    怖いです。宇宙船の中という逃げられない閉ざされた空間の中の緊張感が半端ないです。そんな緊張感の中での猫の登場は卑怯です。宇宙スリラーっていうのでしょうか。血液が強酸って。ただ、描かれるギーガーの世界は本当に素晴らしい。最後に残るのはやはり女性なんでしょうか。シガニーウィーバーだからなんでしょうか。
  • コッポラとマーロン・ブランド 《ゴッドファーザー/地獄の黙示録》Open or Close
    ゴッドファーザー(1972)
    こういう重厚な映画を映画館で見たのは初めてで、一回目記憶に残ったのはマーロン・ブランドの宍戸錠のような頬と馬の首。二回目でようやく理解。アル・パチーノを知ったのもこの映画。ただ、マーロン・ブランドの存在感は一回目から圧倒的にすごかった。そして静かに流れるニーノ・ロータの音楽。日本だったら『仁義なき闘い』みたいなヤクザの組同士の抗争がアメリカのこの時代は組ではなくファミリー。日常の描写が普通に淡々としているためその非常な殺戮は恐ろしかった。

    Love Theme from The Godfather
    地獄の黙示録(1980)
    こちらはベトナム戦争時、軍の命令も聞かず、カンボジアのジャングルで狂人の王となったカーツ大佐。コッポラの表現はやはり重い。ワーグナーのワルキューレが流れるヘリのシーンは有名。マーロン・ブランド演じるカーツ大佐は一目で「この人、いっちゃってる」と感じました。戦争自体が狂気の行為なので、戦闘で人を殺し続けることより、こういう風にジャングルの中で王となって生きていくことに少し共感を持ちました。そして、最後のドアーズ『THE END』、これもシンボリック。

    Ride of the Valkyries
  • アル・パチーノの演じた実話の刑事と犯人 《セルピコ/狼たちの午後》Open or Close
    セルピコ(1974)
    アメリカに行こうとしていた僕にとってはちょっとショックな映画。あまりに目にあまる警官たちの汚職。警官としたら普通の行動が仲間うちには煙たがれ、袖の下を受け取らないセルピコ刑事がどんどん孤立してしまいます。不条理そのもの。相棒にも裏切られ、ついには撃たれてしまう。アメリカの正義って何。
    狼たちの午後(1976)
    こちらは銀行強盗。思っていたことと現実の違いに戸惑ったその行動がリアルです。ごく普通の感覚の人が銀行強盗すれば、俺たちに明日はないの二人みたいにはできません。背景にはやはりベトナム戦争も、ゲイの問題も。この事件の交渉担当刑事がセルピコだったら全く違った結果になったかも知れません。
  • 永遠に語り継がれるシリーズ 《猿の惑星/スターウォーズ》Open or Close
    猿の惑星(1968)
    全5話。中学生だった自分にはかなりショックな映画でした。やはり最後の場面。自由の女神は子供にとっても相当なインパクトを与えるシーンです。猿たちのメイクと種によって職業も決まっていて、その割り当てられた職業にも納得。もちろんこの時点では本も読んではいなかったし、その後にストーリーが続いていくシリーズ映画だとは思いもしなかったので、かなり長い間余韻が残っていました。三作目『新・猿の惑星』で時代が戻って“人間の惑星”となり、全く立場が逆転した時、タイムパラドックス映画なんだと思いました。

    スターウォーズ特集へスターウォーズ写真館へ

    スターウォーズ(1977)
    全6話。これこそ一生見続けられる映画です。ⅣからⅥはまだCGはほとんど使われていません。『トロン』が82年なのですから。18年も待たされ、新三部作が制作されることになり、『ファントム・メナス』を見に行った時は、オープニングの音楽が流れると映画館中が拍手喝采でした。目黒美術館での「スターウォーズ展」で実際に使用された模型やマット・ペインティングを一つ一つ見るたびに感動しました。幼少時喘息だったせいか、グリーパス将軍には愛着があります。

    Main Title, Rebel Blockade Runner


  • 先入観を持って見てしまって裏切られた2本 《キャリー/フルメタル・ジャケット》Open or Close
    キャリー(1977)
    もともとスプラッター映画は苦手で、予告の血まみれのシーンを見たせいか、そんな先入観で見に行ってしまった映画。苦手だったのに何故見に行ったのかは全然覚えていなくて、いまだに不思議。全く違う映画でした。豚の血だったんですね。キャリーの悲しみや寂しさ、孤独感、それがジーンと伝わってきます。ただ、最後のシーンは2センチは椅子から飛び上がりましたけど。リメイクは超能力が重要なファクターにされていて、違う映画になってしまってます。見なくてもいいかも。


    フルメタル・ジャケット(1988)
    それまでいろいろなベトナム映画を見てきたせいか、反戦映画だろうと勘違いしていました。前半の鬼教官の言葉の汚さは他に類を見ません。ひどいです。こんな映画の字幕を戸田さんに依頼するのは酷です。キューブリックの一言で結局戸田さんは下ろされたそうです。この映画で感じたのは戦う二つの国の人たちの心の違いです。ベトナムの人たちにはアメリカに対する強力な憎しみが見えるのに、アメリカ兵には戦争をしているという覚悟のかけらも見えません。演習の延長みたいです。あらためてベトナム戦争とはなんだったんだろうと思います。

    黒く塗れ/ローリング・ストーンズ
  • 子供と動物にはかなわない 《ペーパームーン/ハリーとトント》Open or Close
    ペーパームーン(1974)
    やはりロードムービーはアメリカが面白い。日本ではどうしてもスケール感が出ません。死んだ友人(元かの?)の跳ね返り娘を演じるテイタム・オニールには脱帽。実際の親子と知っていても、あらためてこれこそ蛙の子は蛙だと感心。親父をすっかり喰ってしまってます。聖書を売るためのだましの演技にニヤリ。画面のモノクロがまたいい雰囲気です。ラストのセリフも小憎らしくて泣かせます。

    I'ts only Paper Moon
    ハリーとトント(1975)
    こちらの相棒は猫です。これまた抜群の演技です。私は犬派なのですが、この映画のような微妙な距離感が気持ちいい関係には猫がぴったりですね。ニューヨークからシカゴ、そしてロサンゼルスといろいろな人たちが出てきます。それぞれの町でそれぞれの人たちといろいろなストーリーが描かれます。これぞロードムービーです。確かトントっていう名前はローン・レンジャーの相棒の名前から。トントの方が先に逝ってしまうとは思わず、ハリーの寂しさが伝わってきました。
  • もしも・・・だったらの2本 《カプリコン1/ニューヨーク1997》Open or Close
    カプリコン1(1977)
    もしもNASAの宇宙船着陸の中継が全て地球で作られた映像だったら。中学の頃、アームストロング船長の第一歩を当時テレビにかじりついて見た自分にとってはちょっとショックな映画でした。天下のNASAが世界中に向けてこんなウソ中継を流したら、どれだけの子供たちの夢を壊してしまうのだろう。まあ、あり得ないことなんですけど、心の片隅にはもしかしてって思ってしまうよくできた映画でした。ウソの中継後、出演?した飛行士が抹殺される危険を感じた途端サスペンス映画に変貌。
    ニューヨーク1997(1981)
    もしもマンハッタン全体が刑務所だったら。これもすごい発想です。それほどアメリカの犯罪発生率がひどかった時代でした。そんなマンハッタンに大統領専用機が不時着してしまったら、そりゃ助けに行かなくては、ってなりますよ。なんせマンハッタン島全部が刑務所ですから、囚人の数も半端ない。秩序なんかない。うごめく囚人たちがゾンビのように見えました。これが東京だったら、東京湾埋め立て地なんかになるんでしょう。そこにそびえ立つ超高層のタワー刑務所なんかどうですか。
  • 国家からの脱出 《ミッドナイト・エクスプレス/キリング・フィールド》Open or Close
    ミッドナイト・エクスプレス(1978)
    外国でいきなり見に覚えのない罪によって投獄されてしまったら。実話です。舞台はトルコ。この映画の公開された後も何回か同じようなニュースを目にしました。主人公の忸怩たる思いが伝わってきます。普通に恋人と二人で帰国しようとしただけなのに。もし、言葉が全く通じない国だったら。もし、独裁国家だったら。自分の常識が全く通じないのです。想像するとゾッとします。独裁国家はまだまだあるし、内戦の国もまだまだ存在します。現在でも誰にでも起こりえることなんです。
    キリング・フィールド(1985)
    これはカンボジアです。ポルポト政権です。戦争です。ジャーナリストのアメリカ人とカンボジア人の心の葛藤。当時はこの映画を批判する人たちも結構いました。ポルポトの残虐な行為が描かれていないのが一つの理由ですが、自分はそうは思いませんでした。批判するならそういう人たちがそういう映画を作ればいいと思ってました。パスポートの場面、消えていく写真、ショックでした。一人はアメリカに帰国し、賞を獲ってのバッシング。片や徒歩で国境を目指し、やっとタイ国境を越えた時に見えてきた平和なタイの村に感動しました。
  • 狂気でしか自分を保てないベトナム戦争 《ディア・ハンター/プラトーン》Open or Close
    ディア・ハンター(1979)
    このシチュエーションはベトナムではなくカンボジアであっても作られた映画だったと思います。人間の内部の何かが壊れていったロシアン・ルーレットの場面。檻の中で心がもう壊れかかりはじめた三人。そんなとき自分の命を省みるものはもうなかったのかも知れません。ロシアン・ルーレットでの刺激は麻薬です。だから再び麻薬を求めてしまうのです。ラストに流れる「カヴァティーナ」がジーンときます。メリル・ストリープの名前はまだ知られていない頃でした。

    Cavatina
    プラトーン(1987)
    こちらはパンフレットの表紙のデフォーの両手を上げるシーンが何度もテレビで放送されたり、あまりにも有名なシーンでした。ベトナムの民間人を殺すシーンもでてきます。描かれるのは普通の人間的な軍曹とエゴイストで非情な軍曹の確執。二人の派閥に分かれてしまう部下たち。日本の政治や会社の構図によくあるものです。ただ、それが戦争の中で行われては…。後にこの映画にジョニー・デップが出ていたと知ってびっくり。

    Platoon
  • 男・時代・浪漫 《アラビアのロレンス/ライトスタッフ》Open or Close
    アラビアのロレンス(1963)
    ローレンスは実在の人物です。220分を越える長~い映画ですが、その時間を感じさせません。映画というものを全く見なかった友人が最後まで言葉もなく見入っていました。一人のイギリス将校がアラブ人になった瞬間、砂漠の陽炎の中から現れて来るシーンは美しい。アカバを奪回する場面の空撮、見事です。見直すたびに冒頭と最後のバイクのシーンを忘れていたことに気づきます。

    Lawrence of Arabia
    ライトスタッフ(1984)
    こちらも実在の人物の話、かつ長~い映画です。ソ連との宇宙へ向けた競争が始まった時代。結局は宇宙へは行けなかったチャック・イェーガーという実在のテストパイロットが主人公。音速を超える瞬間、衝撃波さえ美しく見えました。空への挑戦は死とがすぐ隣にあるからでしょうか、未知の領域に突入していく姿に強烈に惹かれてしまうのです。とにかく空のシーンが美しいんです。

    Right Staff